RMのセオリー / 残室 ≠ Availability
「あと何室販売できるか?」という質問をした時に、日本のホテルの多くの方は「残室は●●」と答えますが、レベニュー・マネージャーは「Availability は○○室」と答えます。
一見似ているようで、実は「残室」と「Availability」は大きく異なる考え方です。
例として、次のシチュエーションを考えてみましょう。
- 客室数は 100
- 現在のオンハンド(予約数)は 50 で、内確定予約 10 、仮予約 40
国産PMSのほとんどは、「客室数100-オンハンド50」=「残室50室」を表示します。予約を受け付ける際にレベニュー・マネージャーやスタッフが確認する画面も「残室管理画面」と呼ばれています。
一方で一部のPMSでは、「Minimum Availability」と「Maximum Availability」を分けて表示するものもあります。大雑把に言うとこんな感じです。(実際には細かな設定によります)
- Minimum Availability 50 = 客室数 100 - オンハンド 50
- Maximum Availability 90 = 客室数 100 - 確定予約 10
レベニュー・マネージャーが言う Availability は、もう少し細部を検討します。
検討する材料は以下のものです。
- Wash
- (主に団体の)予約の減少。
- 仮予約が受注できなかったり、催行が確定している団体でもネームリストが届いた段階で部屋数が減少することが多い。
- 団体予約区分を活用することで予測精度が向上する。
- ブロック消化見込み
- 旅行代理店などに提供しているブロック(予約枠)のうち、今後消化されると見込まれる数。
- マーケットセグメント別(またはチャネル別)のブッキングカーブを把握することで予測精度が向上する。
- (ブロックやブロック消化見込みはオンハンドさせない運用が推奨)
Availability の計算は下記のとおりとなります。
Availability 60 = 客室数 100 - オンハンド 50 + Wash 20 - ブロック消化見込み 10
※ 数値はサンプルです。
※ Wash とブロック消化見込みは予測する必要がある数値です。
「残室」という言葉が「残っている数」というニュアンスを含んでいるのに対し、「Availability 」は「有効である」という意味の通り、「現在の状況」に「将来変化する要素(Wash,ブロック消化見込み)」を考慮している点で大きく異なります。
RMは「需要予測を基に 販売を制限する事で 収益の拡大を目指す 体系的な手法」ですから、これから販売できる客室数も「現在の残室数」ではなく「予測に基づくAvailability」でなければならないのです。
特に問題が大きいのは、団体比率が高い日に残室で販売を調整するケースです。このケースでは、団体の仮予約が解けた時点で残室が大幅に増え、そこから一般に販売を開始してしまいます。
上記のケースでは、まだ個人予約で挽回できる時期ですが、Wash予測をしていないホテルのほとんどが、団体管理にも問題があることが多く、「入ると思っていた団体が急に解けてしまい、OHを大きく落としてしまいました」と説明されてしまいます。ここから慌てて個人予約等の販売を再開しますが、予約をかき集める為の戦術が「WEBでの低単価販売」のみとなるケースが多く、結局十分な数の予約が集まらないか、集まっても低価格すぎるというあまり好ましい状態にならないのです。
一方で、Availabilityを基に販売を調整しているホテルでは、団体の減少を見越して個人予約の販売を続けますので、「予測通りに団体が解けたが、個人予約は順調なので問題なく目標が達成できる」状態なのです。
Availabilityと残室、ぜひこの違いを把握してAvailabilityを活用してみてください。