宿泊レベニュー・マネジメントの指標 RevPAR
宿泊レベニュー・マネジメント(RM)では「そのホテルの販売戦略が上手くいっているかどうか」の指標(KPI)としてRevPAR(Revenue Per Available Rooms)を使用します。
- RevPAR = 宿泊部門の室料売上 ÷ 客室総数
- RevPAR = 客室平均単価(ADR) × 客室稼働率(OCC)
ADRやOCCだけではホテルの営業状態の良否は判断できません。
よく言われることですが、客室数100室、正規料金10,000円のホテルでは下記の場合の売上は同じになるのです。
- 正規料金のまま販売し稼働率 50%になった = 10,000円× 50室 = 500,000円
- 50%OFFで割引販売し稼働率100%になった = 5,000円×100室 = 500,000円
また、一般的に単価を上げれば数量が減少し、単価を下げれば数量が増加する傾向が知られており、販売数量を示すOCCと単価を示すADRはトレードオフの関係にあります。
ADRとOCCの両方を観察するという方法もありますが、「そのホテルが上手くいっているかを分かりやすく判断したい」と考えると、両方の数字のバランスで考えるのはあまり得策ではありません。
そこで使用するのがRevPARというわけです。
予算や前年、他ホテルと比較してRevPARが大きくなっていれば、そのホテルの販売戦略はうまくいっていると考えられるわけです。
ところで、ビジネスが目指すところは何かというと(見解の相違が大きいテーマですが)「利益の獲得」です。
株式会社では株主から利益を求められますし、従業員にとっても利益が出ていない会社では倒産リスクが大きいですから安心して勤めることもできません。企業が必要な利益をしっかり出すことはとても重要です。
そう考えると、そのホテルが上手くいっているかどうかは本来売上ではなく利益を使った指標で判断したくなります。 それなのに敢えて売り上げを使った指標である RevPAR が使われるのは、宿泊部門では概ね売上と利益が比例する関係にあると考えてよいからです。
厳密には宿泊の費用は(客室清掃費にしてもルームアメニティにしても)、使用した部屋数に比例するため、同じ売り上げになる先に挙げたa.b.のケースでは使用する部屋数が少ないa.のケースの方が利益が大きくなります。
上記ケースで1室の費用が2,000円だったとすると利益は次のように異なります。
a. 売上500,000円 - 販売客室数 50室×費用2,000円 = 利益400,000円
b. 売上500,000円 - 販売客室数100室×費用2,000円 = 利益300,000円
ですが、ほとんどのケースで同じ売り上げでここまで単価と数量のバランスが大きく異なることが少ないため、RevPARで十分判断が出来ると考えられています。
そのホテルが上手くいっているかどうかの判断に売上を基にした指標を使うことが妥当だとして、なぜRevPARというわざわざ売上を客室総数で割るという手間をかける指標を使う必要があるのでしょうか。
自分のホテルのことだけで言えば、売上を予算や前年と比べるだけでも「良い・悪い」の判断はできるはずなのに、です。
その答えは「比較しやすさ」にあります。
売上そのものを使うと、規模の差から同じチェーン内のグループホテルや競合ホテルと比べにくくなってしまうのです。 例えば下記のケースはどうでしょうか。
c. 売上1,000,000円 ÷ 客室総数100室 = RevPAR10,000円
d. 売上1,000,000円 ÷ 客室総数 50室 = RevPAR20,000円
売上が同じなら規模が小さいホテルの方が「よりうまく(高く)販売している」と言えますね。 同じホテルであっても、改装などにより前年と客室総数が異なることもありますから、やはり直接売上を使って判断するのは難しいと言えます。
RevPARにはもう一つの使い方もあります。 それは「受注判断」です。
- RevPAR < 希望単価 → 受注した方が良い
- RevPAR > 希望単価 → 受注しない方が良い
予算や前年のRevPARを上回る予約を受注し続けることで、目標達成が容易になります。 これは稼働率が80%を上回るなどして「これ以上数量を増やせない」タイプのホテルほど当てはまりやすいと言えます。
上記はあくまで簡易的な判断です。実際のRMではもっと高度な判断をしています。
しかしレベニュー・マネージャーでない方が目安として把握するには十分でしょう。
RevPARのまとめ
- RevPARは宿泊部門の代表的KPIである
- 室料売上を客室総数で割ることで規模の違いを吸収する指標となっている
- 他ホテルとの比較に向いている指標である
- 大まかな受注判断基準として使える
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【基本用語】レベニュー・マネジメント 2017/01/17現在 62語 | ホテルマネジメントをサポートする/亜欧堂