レートコントロールのタイプを考える
宿泊部門のレベニュー・マネジメント(以下RMS RM)において、増収効果を高めるために「最低販売価格(Hurdle Rate:以下HR)」をどのように管理するかは重要なテーマとなります。
レートコントロールは幾つかのパターンに分類され、その観点は大きく2つです。
- 販売開始時点の価格をどのように決めるか
- HRを変動させる仕組みをどのように構築するか
販売開始時点の価格決定方法が大きく2パターン、
HRを変動させる仕組みが大きく2パターン、
これらの組み合わせで4パターンの料金コントロールの体系が見られます。
販売開始時点の価格をどのように決めるか
販売開始時点の価格を幾らにするか、そしてその後の予約受注に伴いどのようにコントロールするか、その方法も大きく2つに分類することができます。
- オンハンドに基づき販売価格を決める:オンハンド型価格設定(OH Pricing)
- 予測に基づき販売価格を決める:フォーキャスト型価格設定(Forecast Pricing)
オンハンド型価格設定は、その名の通りオンハンドに合わせて販売価格を吊り上げていきます。
そのため、販売開始時点の価格は低く抑えておくのが基本です。
フォーキャスト型価格設定は、「この値段で埋めきれる」という予測に合わせて販売開始時点の価格を決め、予測が外れない限りはその価格を変えないというコントロールが基本となります。
現実にはこの2つを複合して運用しているホテル・旅館が多いようなのですが、どちらの色が濃く出ているかによって大まかに分類することができるでしょう。
どちらも増収効果を得ることはできるのですが、物事には何にしても長所と短所があるもの。この2つにもそれぞれ長所と短所があります。
- オンハンド型価格設定
- 長所:
- オンハンドに合わせて価格を決めるので「価格を高くしすぎて予約が伸びなかった」というミスが起きにくい
- 短所:
- 安く販売する時期があるので全体的なADRが低い水準になりやすい
- 価格変更の頻度が高くなり手動で価格変更を行う場合は生産性が低くなる
- 長所:
- フォーキャスト型価格設定
- 長所:
- 全体的なADRが高い水準になりやすい
- 価格変更の頻度が低くなるため生産性は高くなりやすい
- 短所:
- フォーキャストを間違えれば増収しにくい。
→ ハイリスクハイリターンとも言える。上級者向け。
- フォーキャストを間違えれば増収しにくい。
- 長所:
どちらがお薦めかといえば、「ブッキングペースを毎日確認する」ことを前提に「フォーキャスト型価格設定」を行う方が良いのです。
フォーキャスト型価格設定は予測を間違えると予約が極端に伸びなかったり伸びすぎたりという短所があるのですが、ブッキングペースを毎日確認することで、そのミスの発生を予防することができます。
一旦フォーキャスト型価格設定が機能し始めれば、全体的にADRは伸びやすくかつ価格変更の手間も減るという効果が得られますし、前年データをもとに次年度の販売開始時点の価格を見直すことも容易になるのです。
※ 上記サンプルでは約16%もフォーキャスト型の収入が大きくなっています。
HRを変動させる仕組みをどのように構築するか
オンハンド型価格設定を行うにしても、フォーキャスト型価格設定を行うにしても、実際のブッキングペースに合わせてどのようにHRを変動させるか、その仕組みを構築する必要があります。
HRを変動させる仕組みもまた、大きく2つに分類されます。
- 料金を開け閉めすることでHRが変動する:レートバケット型の変動
- 料金そのものを変動させる:ベストレート型の変動
レートバケット型はRMの黎明期に主流であったスタイルです。
簡単に言うと幾つかの宿泊条件の異なるプランや料金を用意し、低需要時には割引系料金もオープンし、高需要時には割引系料金をクローズすることで需要に合わせた価格調整を行うというものです。
一方、現在主流のレートコントロールはベストレート型で、需要に合わせて料金そのものを変動させます。ダイナミックプライシングやフローティングレートと呼ばれることもあります。
やはりこの2つの方法にも長所と短所があります。
- レートバケット型の変動
- 長所:
- 低需要時にも高単価商品の販売可能性が残っている
- 短所:
- 連泊が取りにくくなる
- 高需要時に商品選択の幅が狭くなる
- 長所:
- ベストレート型価格設定
- 長所:
- 連泊が取りやすい
- 高需要時でも商品選択の幅が広いまま
- 短所:
- 低需要時に高単価商品の販売が行われにくくなる
- 長所:
これもどちらがお薦めかといえば、ベストレート型の変動です。
一番大きな理由としては「レートバケット型の変動では連泊が取りにくくなる」ことのデメリットが大きいからです。
WEB予約の今主流の仕様では、プラン違いの連泊は予約の候補として表示されません。結果連泊が取りにくくなります。しかし連泊は売上の安定化や低コストといったメリットが大きく、優先度が高いのです。
これらの特性を理解した上で、自ホテルの現状に合うレートコントロールのスタイルを決めていただければ幸いです。