データの活用を考える
レベニュー・マネジメントの導入のお手伝いをしていると、よく「もっとデータ分析をしっかりやりたい」との声を耳にします。では、データの活用とはいったいどういう状態をいうのでしょうか。
実はデータには、大きく2つの種類があります。
- 戦略戦術を立てる為の素材となるデータ
- 戦略戦術の状況が適切かどうかを判断するデータ
この種類を意識してデータを分析する必要があります。
また、この両方の種類に該当するデータもあります。
宿泊部門でいえば、RevPAR, ADR, OCC等がそれに当たります。この様なデータは、KPI (主要業績評価指標)として扱われることが多く、ホテルの種類や状況を問わず、等しく必要になります。
戦略戦術を立てる為の素材となるデータは、多くの種類を集められれば分析の幅が広がります。一方で、PMSで集計できる事を担保しなければ、データを集める効率が悪くなり、「分析の為の時間がかかりすぎる」という状態に陥りやすくなります。
戦略戦術の状況を確認する為のデータは、そのホテルが立てた戦略戦術により、必要となるものが変わります。例として、以下のものを挙げておきましょう。
- レジャーマーケット(2P)を増やすことでADRを上げる → ADR, DOR
- 連泊需要を増やす為に、AGTに連泊特典を提供する → AGT の LOS
- 自社サイトの予約比率を上げる → 自社サイトの RN と Share
さて、データの活用に最も大切なことは「戦略戦術と結びついているか」です。この部分がしっかりと担保されれば、データが活用出来ないということはなくなります。
その為に一番大きな課題は、マーケットセグメントの設計です。
マーケットセグメントは、マーケティング的には「お客様を共通の傾向で分類したもの」であり、それぞれのセグメントに対して、適切なマーケティング活動(マーケティングミックス)を行うことで増収増益につながります。
そしてマーケティング的には、マーケットセグメントの分類基準に正解はありません。基準はその企業の自由なのです。
一方で実務的には、ホテル内でマーケットセグメントに対して共通認識を持つことが必要不可欠です。ホテルの中では、マーケットセグメントに基づく戦略構築が最優先となるべきだからです。
実例で挙げると、あるホテルチェーンのマーケットセグメントはWEB, AGTなどの「経路」型で、個人・団体が分かれていないものでした。そのチェーンの中のあるホテルのGMは、最優先の戦略として、「団体獲得」を挙げています。
これでは、戦略の優先度について意識が違いますし、何より報告書の数値に「個人・団体」の分類が見られない為、そのGMの説明を数値面から検証できなかったり、あるいは検証する為に手をかけて別に集計・分析する作業が必要になってしまうわけです。
データを活用する為のポイントは以下の通りとなります。
- マーケットセグメントに基づく戦略が最優先の戦略として共通認識になっている
- 戦略の実行状況を検証する為にデータが使われている
- 必要となるデータは、PMSから取得できる事が担保されている